【K’SPEC NOW|特選コラム】トヨタの「GR」ってなに?GAZOOの訳ありな歴史を解説
最終更新日|2024年1月10日
2017年9月19日にトヨタ自動車がスポーツカーシリーズの「GR」を発表しました。ひらたくいえば、既存にラインアップしているモデルのチューニングコンプリートカーなわけですが、いきなり「GR」っていわれても……G’sとはなにが違うの?などと疑問がわいてきます。
今回は何回かにわけてGRとはなにかを解説していきたいと思います。
GR誕生を知るにはGAZOOを知るべし!
GRとはGAZOO Racing(ガズーレーシング)の頭文字をとった名前ですが、そもそもGAZOO Racingってなに?って思うのが普通だと思います。
じつはこれ、かなり複雑な歴史をもっていて、ちょっとした車好きでもハッキリと説明することが難しいとされています。
新ブランド「GR」を説明するまえに、まずはその歴史を紐解いてみましょう。
叩き上げのサラブレッド豊田章男
いまのトヨタ自動車の社長は誰か知っていますか?豊田章男(トヨダアキオ)社長といって、名前の通りトヨタ創業家の血筋をもつ由緒正しき方です。トヨタ自動車の初代社長は豊田利三郎という人ですが、そもそもトヨタ自動車は豊田自動織機製作所(現在の豊田自動織機)内に作られた自動車部が起源であり、その豊田自動織機製作所を創業したのは豊田佐吉という人です。つまりトヨタ自動車は豊田佐吉さんが源流なわけですね。豊田佐吉さんの詳しくはWikipediaをみてもらうとして、豊田章男社長は佐吉さんのひ孫になるわけです。ちなみにトヨタ自動車の歴代の社長は決して豊田家だけが勤めていたわけではありません。
そんなサラブレッドな章男さんなので、順風満帆なトヨタ自動車ライフを過ごしてらっしゃるのかと思いきやそうでもないようです。章男さんがトヨタ自動車に入社した当時の社長は父である章一郎さんが勤めており「息子だからといってぬるま湯に浸からせんぞオラァ」と言ったかどうかわかりませんが特別扱いはされずに平社員としてスタートしたようです。
課長時代に起ち上げた渾身の想い
そんなこんなでだいぶ割愛しますが、現場で一生懸命ガンバっている章男さんは業務改善支援室の課長時代に画像を使った中古車販売システムを開発します。それが「Gazoo(ガズー)」という名前でした。いまではネットで中古車の画像を検索するなんてあたりまえですが、これをインターネットが普及していない約20年前にはじめたというからスゴイですね。画像だからGazooをもじってガズーとしたようです。そのネーミングセンスはさておき、トンガッたシステムすぎてトヨタブランドの名前を使えないという残念な扱いをうけてしまいます。豊田一族本家なのに……。
GazooのシステムはいまのGAZOO.comというクルマ情報サイトとして脈々と受け継がれていて人気がありますよね。
反骨精神が強いのか、その後も章男さんは独自の道を開拓しまくります。トヨタ自動車はトヨタレーシングというモータースポーツ部門をもちますが、そんなの関係ねぇとばかりにTEAM GAZOO(現GAZOO Racing)を起ち上げてニュルブルクリンク24時間レースに参戦します。この時もトヨタブランドの名前は使えなかったようです。これがGAZOO Racing誕生の瞬間ですね。
しかも自分もドライバーとなって走ります。モリゾウという名前はこのときから名乗っているようですね。またそのネーミングセンスはさておき、それが2007年の話。
実際の内情はわかりませんが、トヨタブランドに頼らない章男さんの執念が感じられます。
社長になって本領発揮!G’sの誕生
その後も章男さんはGAZOOとともにトヨタ自動車内でメキメキとチカラを付けていき、ついに2009年に社長に就任します。そうなるとあとは章男タイムの到来です。GAZOO絡みの製品やプロジェクトを次々と世に輩出していきます。みなさんが1番身近なのはG’sシリーズではないでしょうか?G’sはG Sportsの略ですが、GAZOOの血統です。ヴォクシーやプリウスなどのクルマにチューニングを施したモデルをラインアップさせていき、GRMN(GAZOO Racing tuned by MN)というシリーズでiQやヴィッツなどによりハードなマシンも用意しました。
GAZOO Racingとともにトップに登り詰める
そしてしまいには、2015年にモータースポーツ部門のトヨタレーシングとレクサスレーシングもGAZOO Racingに統合してしまい「TOYOTA GAZOO Racing」となっています。先に書いたTEAM GAZOO時代のリベンジかどうかは本人のみぞ知る……。いずれにしてもいまのトヨタ自動車のモータースポーツ活動はすべてGAZOO Racingが担っているということになりますね。
また2017年4月には「GAZOO Racing Company」となりトヨタ自動車社内での確固たる地位を確立しました。
つまり
トヨタ自動車=豊田章男=GAZOO Racing
というわけですね。
約20年の歳月を経て、章男さんはGAZOOブランドをトヨタ自動車内でトップにまで押し上げたんですねぇ。ガンバったね、章男さん。
GRは身近に楽しめるGAZOO Racing
さてようやく本題です。
「GR」はそのGAZOO Racing Companyの数ある活動のなかで、スポーツモデルの商品を展開するブランドとなります。
これまでは名前がバラバラでしたが、今度からはすべてGRとなるのでわかりやすいですね。その構造がこちらです。
「GRMN」はモータースポーツ直系のフルチューンコンプリートの限定生産モデル
「GR」は足まわりだけではなく駆動系まで手を加えた量販モデル
「GR SPORT」はGRの乗り味をより市販車に近いかたちで楽しめるモデル
「GR PARTS」はカスタマイズを楽しめるアフターパーツ
いかがでしたでしょうか?
まずはGRが誕生するまでの生い立ちがわかっていただけたかと思います。
次回は多すぎるGRシリーズの住み分けを解説したいと思います。
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