14アリスト

令和の今こそ知りたい!平成の名車
14アリスト【短期連載⑥/8回】

 

平成から令和へ。例え時代が移ろっても、名車は名車であることに変わりない。そこで、不定期連載で、平成という時代を彩ったセダンを独自の視点で解説していく。

14アリスト【平成3年10月DEBUT】

14マジェスタと基本シャシーを共用しながらも、全く別モノのキャラが与えられたアリスト。

猛禽類を連想させる精悍なフロントマスク、大胆なハイデッキテールが印象的なフォルムは、マセラティのギブリやVWのゴルフ、ロータスのエスプリといった、数々の名作を手掛けたジョルジェット・ジウジアーロ率いるイタルデザインの仕事。ちなみに、トヨタが外部デザイナーの関与を明確に公表することは、極めて異例だった。

この生まれもっての異端児とも言える、ニューカマーのトップグレード・Vに与えられたのが、今もなお名機中の名機と言われ、国内外で引っ張りだことなっている2JZーGTEエンジン。若い世代の間では80スープラが最初だと思われている節があるが、正真正銘、搭載第1号はアリストVなのである。

その速さはトラクションコントロールという機能の重要性を実感させるほど過激で、飛行機の離陸時のように力強い加速フィールは記憶に強烈に焼き付いている。有力専門誌の計測データでは0〜400m加速14秒7、静止状態から100kmまで6・7秒。もちろん、これは当時のセダンとしては最速であり、最強を誇っていたR32GTーRやGTOなどにも肉迫していた。

そんなアグレッシブな性格を持つクルマだけに、ドレスアップの世界においても、GT系チューニングカーのようにバンパーの中央開口部をカットしてインタークーラーを前置きし、足まわりもハードな全開走行に耐え得るだけのセッティングが施された「スポーティVIP」というトレンドを牽引。この仕様は特に中国や九州地区で多く見受けられた。

同時に、セダンファンだけではなく、スポーツカーファンからの注目も集めるようになり、スープラ用ミッションを移植したマニュアル仕様も相当な台数が作られた。

反面、これまでの高級セダンとは大きくかけ離れた、あまりにも奇抜なルックスゆえ、イジるには高度なセンスとバランス感覚が要求されたのも事実。この料理の難しさもあってか、ドレスアップベース(こちらはNAのQグレードが主体だった)としての評価はマジェスタやセルシオの影に隠れることに。

アリストというクルマが揺るぎない人気を得るには、純国産デザインを纏った16系の登場を待たなければならなかった。


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