高級スエード調人工皮革

「ウルトラスエード®」って、なに!?

日夜、様々なニュースが飛び交う世の中ですが、ことクルマ業界に関する話題も豊富にあるものの、意外に多くの出来事が見過ごされているのでは!? と、K’SPEC NOWでも時事ネタを扱ってみることにしました。1回目の今回は、カスタム業界にもとても馴染み深い、「高級スエード調人工皮革」の話題です。同素材への盛り上がりを象徴するようなニュースが、先日1月16日に発表されました。

高級スエード調人工皮革の最大手、東レが、生産力を1.6倍に拡大!

日本を代表する化学繊維や合成樹脂などを扱う企業である「東レ」は、1月16日、日本で生産するスエード調人工皮革 「ウルトラスエード®」の生産設備増強を発表しました。
一部新車にも標準採用されるなど、その知名度を確実に高めつつある「ウルトラスエード®」は、滋賀県大津市にある滋賀事業場や、岐阜県安八郡にある岐阜工場で生産されています。この生産設備を見直し、年産約1,000万m2に生産能力を高める計画とのことです。この量は現在の生産力の約1.6倍の規模になります(正式稼働は2019年9月〜)。

「ウルトラスエード®」は、ファッション業界やインテリア業界だけでなく、とくに近年、高級車の内装素材としての需要が急拡大中とか。今後供給が追いつかなくなる可能性が高いとの判断から、生産力増強決定となったそうです。今後、↑のロゴを見掛けることも多くなるかもしれませんね。

そもそも「ウルトラスエード®」って、なに!?

「ウルトラスエード®」は、1970年(昭和45年)に開発された独自の超極細繊維生産技術を元にする、植物由来の再生資源をベースとした東レオリジナルのマテリアルです。独特な肌触りや高い耐久性、豊富なカラバリ、発色の良さ、メンテナンス性のしやすさなど、いいこと尽くし。高級車だけでなく話題のクルマにも採用されるなど、注目のホットマテリアルです。昨秋鳴り物入りで発売された、レクサスの新型LS(標準グレードは天井とサンバイザーに、Fスポーツはさらにシートに)にも純正採用されていますヨ。ちなみにレクサスで「ウルトラスエード®」が採用されるのは、このLSが初です。

「ウルトラスエード®」自体は、素材開発直後の1970年代からすでにアメリカで展開されており、45年以上に及ぶブランドの歴史があります。本国日本やアジア圏では、長く「エクセーヌ®」の名で並行展開されてきましたが、2013年にブランド体系を見直し、「エクセーヌ®」を「ウルトラスエード®」に統合。現在に至ります。「エクセーヌ®」の名は一部工業用研磨剤などの素材として残っているそうですが、一般的に目にする機会はかなり少なくなっています。

ここで気になるのが、高級車やカスタマイズの世界でもお馴染みの素材である、同じ高級スエード調人工皮革である「アルカンターラ®」との違いかと思います。じつは「アルカンターラ®」は、イタリアの「アルカンターラ社」が展開するブランド素材。じつは同社は、東レの子会社なんです。みなさんご存じでした? 東レ広報部によると、『「ウルトラスエード®」も「アルカンターラ®」も、ベースとする技術や出発点は同じ』とのこと。仕上げの過程で用いられる技術が、それぞれ独自とのことで、品質的にどちらが高いとか、低いとかはないとのことです。

判りやすい両者の最大の違いは、生産国

「ウルトラスエード®」は日本製、「アルカンターラ®」はイタリア製 であることも大きな違いです。事業拠点を日本、イタリアとそれぞれ独立させ、独自の製品作り、ブランド展開をしています。ちなみに「ウルトラスエード®」が、本格的にクルマ用として採用され始めたのは、同社広報部によると、1988年に発売されたトヨタ「カリーナED」とホンダ「プレリュード」から(当時は「エクセーヌ®」ブランドでの採用)。


↑ 写真は1988年発売のホンダ・プレリュード。前後シートだけでなく、天井やバイザーもエクセーヌでした。

さらにちなみに、2015年10月に発売され話題を集めた、あの「シャア専用オーリスⅡ」のシートも「ウルトラスエード®」だったんですよ〜。


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